初めての読書
2019年12月25日


長男が帰ってくるたびに私の本棚を見つめて、何冊か本を手に 『 これ借りていくわ~ 』と了解を得るわけでなく一方的に話して 本を持って帰る
その姿を見ていて、私も同じようなことをしていたのではと、思い起こす
たしか、中学三年生の時に 世界文学全集を紙袋に入れて毎月大事そうに本を買ってきていた 通勤帰りの父親の姿を思い出していた
その中の一冊 『 これ貸して~ 読むけん~ 』 と言って 自分の机に持っていき読み始めた時のシーンをうろ覚えに
先日、我家の本棚を探していてその全集を見つけた
河出書房の世界文学全集 Ⅱ-18 ヘミングウェイ
長編だが、この「武器よさらば」は私が最初に読んだ長編小説 だった。
何日もかかって、帰宅するたびに少しずつ読み進めて 最後には徹夜して読破した・・・そのこみあげてくる感動を
この小説から初めて知った。
高校生になり、直木賞ということをマスコミで聴き 父に 『あめりかヒジキ って何? 』 と 野坂昭如の受賞作のことを聞いたことも思い出す 『 紅茶のことや~ ヒジキみたいやろ~ 』
そして 直木賞受賞作 『火垂の墓 ・ アメリカひじき 』を手に 初めて涙を流して読んだ
三本松高校一年生の時の(英語)グラマーの教師は 松下秀男先生
本来ならば英語の文法を教えるのがその担任の仕事なのに、自分でタイプ打ちした原稿を 謄写版で 印刷して
生徒に、 O・ヘンリーの 「After Twenty Years 」 を 順番に読み訳することを 授業としていた
その時の、先生の日本語訳が ウィットに富んでいて 私たちが直訳する言葉とかけ離れて 魅力的な文章なんだと
その小説のことを 教えてもらった・・・・53年も前のことになる
そして再び、その原文を読みたくて、最近、アマゾンで 取り寄せて読んでいる。
大学生の頃、友人の 田中君から 『 おーい お前~小林秀雄を知ってるか~? 知らんかったら・・・この本貸してやるわ~ 』 と言って そのまま貸してもらった本は、いつしか私の本棚に並ぶようになった
小林秀雄の文章の切り口鮮やか、その見事さに 二十歳の僕は 感動していた それが 『 無私の精神 』 でした
50年過ぎても、本との衝撃的な出会いは 人生を広く深く見つめることを 何度も教えてもらう
だから、長男が、了解も得ずに私の本棚から 大事な本を 一方的に持って帰ることを 決して嫌なわけではない
若いころの自分を見ているような気になり、本を小脇に抱えて帰る長男の後姿を懐かしいものを見るように眺めている

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